岡野さんは、伯父さんの別荘が神山国際村(当時は外人村)にあったため、学生の頃である昭和19年に初めて野尻湖を訪ね、その後、回を重ねる中で昭和40年には黒姫山の麓になる山桑にご自分の別荘を建てられた。 そういう中での体験や知り得た事柄をまとまめられたのが本書で、往時の信濃町や生活状況を知ることができる。
山荘の水利権の話、国際村(外人別荘)のこと、「ふみの丘」の名前の由来、ゲレンデ開発やペンションの林立など、黒姫を知った方には大変興味をもって読むことができる著作となっている。 特に「ふみの丘」の「ふみさん」は伯父さんの奥さんの名とは知っていたが、「おかのふみ」さんという姓名を逆転させたのだというのは先日の講演会で初めて知った。
山桑での生活から数々の童話が生まれたと、ご自分の著作生活を中心に纏められたのが「森のネズミの山荘便り」である。
本書は、黒姫第二弾の著作であろう、ご自分の創作活動の原点や視点となったヒメネズミなどの小動物や自然界の現象なども含めて、広く捉えて書かれている。 本書を読み始めて最初に感じた一節を、
長野で、信越線直江津行きに乗り換える。 北長野を過ぎ、豊野にさしかかる辺りから、車窓の風景は一変して雪景色になる。その変わり方は劇的だ。
(略)
今頃、黒姫山荘は雪の中だろう。そうして、ヒメネズミたちは、もう、山荘に引越してきていることであろう。
(略)
古間駅を出て黒姫に近づくに従い、列車はカーブして、右側の車窓に大きく妙高山がせりだしてくる。 山に迎えられた気分で、私の胸はどきどきする。 こうしたふるえるような胸のときめきは、都会に居ては味わえない。
この一節に、特に共時性を感じる。 新幹線が開通している今はそれほどの感慨でもないが、以前の「特急あさま」に乗って黒姫に向ってきた時の、この"わくわくする気持ち"は何ともいえずに嬉しいものであった。
2005年4月から、一茶記念館では岡野薫子さんの企画展を開催しているが、岡野さんが蒐集した、国鉄柏原駅や黒姫駅の入場券なども見られて楽しい。
一茶記念館で買い求めた本書には著者のサインがあった。
岡野さんの、この2冊は特に大事にして行きたいと思う。 加え、岡野さんは野尻湖グリーンタウンにも山小屋をお持ちだとか、自分も以前に食指を動かして、野尻湖近辺の別荘地を訪ねたが、なかなか条件に合わず結局諦めてしまった。
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