先週、雪国の黒姫を離れて、更に極寒の世界を体験すべく女満別(めまんべつ)空港に降り立った。 しかし、意外にもマイナス5~6度の温かい気温に少し拍子抜けであった。
網走市内に向かう道路脇には網走湖の凍結している景色が広がる。 周囲42kmと野尻湖の倍以上の大きさであるが、水深は16.1mと野尻湖の半分以下である。 ”たまちゃん”もどきのアザラシも網走川を上がって湖畔で休んでいる姿を見ることができるらしい。
市内にある道立北方民族博物館を見学し、ヨーロッパやアメリカまで広がる北方民族の生活を知り、極寒の地で生きる人類の知恵のすばらしさを感じると同時に、現代人の知恵の無さや弱さをあらためて認識してしまった。 また、展示品の殆どが海外から収集したもので所謂アイヌ民族のものは少なく、日本人が少数民族を迫害してきた結果であろうと、日本の近代史に暗澹たるものを感じた。
二日目は快晴で、遅い日差しに照らされ流氷が姿を現してきた。 例年1月初旬に接岸するものが今年は2月になってやっと見えたらしい。
いよいよ今回のメインイベントである流氷ウォーキングの体験である。 スキューバダイビングの着古しと思われるドライスーツに着替え、宿舎前の海岸から氷の上を歩き出す。 薄氷は簡単に割れるからと注意され、巨大な山のような氷はないものの、でこぼこした氷の原をおっかなびっくり状態で歩く。 間もなく慣れるが、大きな岩の側の薄氷の上に皆が乗り、飛び跳ねて割るのである。 出来上がった”流氷風呂”に浸りながら水中を泳ぐ生物を探し、ほどなくクリオネやオキアミのような生き物を見つけることができた。
シュノーケルを付ければもっと発見があったであろうが冷たい水に顔をつける勇気はない。 小さな氷の島を飛ぶ渡るのは大変面白く、不安定になるとたちどころに”チン(沈)”してしまうのであった。
22日から23日にかけての北海道の大雪は、鉄道の遅れや飛行機の欠航などを招き、網走でも観測史上一番の大雪であったとのこと。 その直前であった22日の夕方には羽田に着くことができたが、一便でも遅かったら大変な目に会ったのではと非常に幸運な旅であった。
そのツアー最終日に再び流氷ウォークに挑戦。 肉眼では見にくいと、ガイドにクリオネをタコメガネですくってもらい、かわいらしい羽根の仕種をじかに見ることができた。
このクリオネであるが、学名クリオネ・リマキナ、英語名シーエンジェル、和名ハダカカメガイで、巻貝の一種で貝殻を持たないのである(ナメクジと同じ)。 動物プランクトンやミジンウキマイマイなどを餌としているらしいが、その捕獲する姿はかなり獰猛で、かわいい姿とは全く相応しくないものらしい。 しかし、鯨や鮭の餌になっていると、最後は人間がその恩恵に浴しているのである。
流氷ウォーク以外にも、能取岬での雪原ウォーキングや森林でのスノーシューイング等々も体験できたが、奥深い厳しい自然の中で生きる鹿やキツネ、ワタリガラスなどを垣間見たが、その中で、自然の生命の尊さや地球という生命体のほんの一部として生かせてもらっている人間がいかに小さなものだと感じてしまった旅でもあった。
黒姫よりもっと哲学的な意味を持つと思える知床の自然を知りたいと感じたのは私だけではなかったようだ。 知床に興味ある人は、知床ナチュラリスト協会のページを見られると参考になるであろう。
(旧徒然日記から転記)
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