以前、田辺聖子の「ひねくれ一茶」を読んで、一茶の人間臭さにどうも近づき難い印象を持っていたし、俳句そのものにも全く興味がなかった。
しかし、10年ほど前にNHKのラジオ談話室で流された内容を書物にされた、東京大学名誉教授で浄土真宗の住職でもおられた早島鏡正氏の「念仏一茶」という本を読む機会に恵まれ、今まで持っていた一茶像を根本から拭い去ることができた。
「そのやさしさの秘密」と副題が付けられた本書で述べられているように、柏原を出てからの人生経験や病床の父親の介抱、自らの結婚や子の死などを経る中で、晩年には深い宗教観や精神性を持つに至ったとのこと。
短い十七文字の語句の中に、深い仏教的な観念が内在していることに、一茶の偉大さがあるのであろう。 このように、単に句の旨さではなく、一茶の精神性を解説してくれるような書籍がないか探し、もうしばらく一茶の人間性に触れてみたくなった。
本書の中で解説のあった句の一例を残す。
- 春立つや愚の上に又愚にかへる
- みだ仏のみやげに年を拾ふ哉
- 寝すがたの蝿追ふもけふがかぎり哉
- 露の世は露の世ながらさりながら
- なむあみだ仏の方より鳴蚊哉
- 柳は緑花は紅のうき世かな
- やれ打つ蝿が手をする足をする
(旧徒然日記から転記)
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