「汽笛一声新橋を はや我汽車は離れたり...」に始まる東海道線の各駅をうたった鉄道唱歌は、JRになった今でも懐かしさが感じられる歌であるが、かつて信越線が上野・高崎・横川・軽井沢・上田とつながって走っていた頃の光景を思い出させてくれる鉄道唱歌信州編なるものもある。
鉄道唱歌データベースという個人のサイトだが、北海道、東北、山陽ばかりでなく、かつての満韓鉄まであり、自分が生きてきた時代とあわせ誰もが郷愁を感じさせてくれるものではないかと思う。
財団法人 碓氷峠交流記念財団が運営している碓氷峠鉄道文化むらがかつての碓氷峠鉄路をトロッコ車で走らせているが、2Kmたらずでなく、是非軽井沢までつながってほしいものだ。
で、件の信越編だが、長野・直江津間を見ると
日本最古の仏像を 安置せるてふ善光寺
争いまいる老若の おりてつどえる長野駅
左に戸隠山を見て 着くは豊野の停車場(すてーしょん)
秋の錦をさながらに 映せる水は琵琶の海
いと怖ろしき地獄谷 針の山さへきこゆれど
暑さ忘るる温泉に 楽しく遊ぶ人もあり
牟礼・柏原打ち過ぎて 野尻に著(し)るき芙蓉の湖
倒(さか)さに映る小富士山(こふじやま) 棹さす波に雪ぞ散る
関川越えてわけ行けば 田口・関山・新井駅
北越一の大雪と 世に響く名の高田町
西に見ゆるは春日山 上杉氏の旧城趾
秋の霜夜に月影を かすめて行くや雁の声
窓より近く直江津の 湊(みなと)も見えて風さむく
予(かね)てかくとは聞きぬれど たつ波高し礒(いそ)の上
さらに、地理唱歌汽車の旅というのもある。
四海に名高き善光寺 百済(くだら)国より伝来の
釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)のまし所 仰ぐ功徳(くどく)のありがたや
無情を告ぐる鐘の音に 吉田・豊野も夢と過ぎ
つきしは牟礼の停車場(ステーション) 四方の眺望(ながめ)ぞおもしろき
戸隠山は屹然(きつぜん)と 怒るが如く峙(そばだ)ちて
黒姫山は優然と 笑うが如く相対す
煙や靡(なび)く柏原 東へ一里野尻町
ささ波清き芙蓉湖や 周囲三里三十町
いざ別れゆく信濃路の 名残とどむる関川や
渡るかなたは田口駅 はや越後路に入りにけり
赤倉温泉名に高く 妙高山を背に負いて
遙(はるか)に望む北の海 唯一目に見渡さる
関川つたいめくりゆく 轍(わだち)とどむる関山や
片貝川の鉄橋を 渡ればやがて新井駅
県内第二の都会なる 高田の町もとく過ぎて
汽笛の声に驚けば はや直江津に着きにけり
近来開けし町にして 北海主要の良港ぞ
港内帆柱(ほばしら)林立し 船船常に出入りす
春日山頭いにしえの 姿はあとも遺らねど
霜夜を照らす月かげに 泣き行く雁や忍ぶらん
(旧徒然日記から転記)
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