先日のまとまった雪降りを春の悪戯かなと思っていた所、ここ数日の天候は2月と3月が入れ替わったようで、屋根の色が白くなっている家々が今日も見られる。
さて、狩野誠さんが書かれた「荒野に灯をともせ - 黒姫山麓の二十五年」を読んだ。 日記に書かれていたものを随筆に書き直しされたものであろう、一つ一つは短い文面だが、戦後間もない時期から開拓という厳しい生活をされてきた、その生き様の一端をうかがい知ることができる著作であった。
狩野さんは、先の大戦の特攻隊員として鹿児島県知覧で敗戦を迎え、高倉健主演の映画「ホタル」で見られたような仲間たちへの遣る瀬無い思いを、心の奥底にずっと持って来られたであろう。 そんな思いが、草や土に目を向けさせる要因になったのではないかと思った。
北海道など他の開拓地でも辛酸を舐めた農民は多かったであろうし、黒姫開拓にも沢山の引揚者が入植したが、ある人は挫折したり亡くなったりと、現代の生活を得た人々は少ないようにも聞く。
そういう黒姫の開拓にかかわった人々や、黒姫開拓の真の姿を知ることは、信濃町に住み、関わる人々にとって大変大事なことではないかと思う。
○目次から一部を残す
荒野に立つ
掘立小屋を建てる
ランプの灯
土を斬る
熊の皮算用
おみくじ
カラス野郎
一粒一菩薩
蛙のてんぷら
山菜の宝庫
おらが蕎麦
口の中でボウフラが
・
・
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灰燼に帰す
七難八苦
この目次を見るだけで、その厳しさが分かるもの。 本書は、昭和47年2月15日発行となっているが、狩野さんの工場の火災は、前年の3月12日に発生し、
「ごくろうさん・・・・・がんばろう」
とかける言葉もいつしか涙声になっている。 あの不眠不休で自らの手で建てた思い出の桁の一本、梁の一本、屋根の一枚が燃えている。 なが年にわたってあつめた開拓の記録や薬草の資料が書籍と一緒に炎となってゆく。
と記しいる。 本書を縮刷版とし、300頁強の本版の出版を予定されていたらしいが、ひょっとしてこの火災で原稿等を灰に帰したものと思われる。
もし出版されていれば、35年経つ現在でも、古本という形であっても手にすることができたわけだ。
そういう意味でも大変残念に思うし、町内の家々に残っているかもしれない開拓資料を探してでも、あの開拓の歴史を後世に残してほしいと思う。 黒姫開拓の歴史は信濃町の歴史でもあるからだ。
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