今日の暦から : 良い習慣に病は無し
本書は書かれて10数年経っているが、中野さんが憂慮された社会状況は一考に改善されず、逆に悪くなっていると言えよう。 昨今、「格差社会」とか「ワーキングプア」などという言葉が生まれていることからも分かる。
直近の例では、ガソリン税や後期高齢者医療が上げられる。 すなわち、道路特定財源が適正に利用されているか十分な精査もなく、地方への交付税が無くなると脅かしながら財源にことさらに群がるハイエナごとき政治屋や官僚の存在は決して減っていない。 年金問題が何ら解決せず医療保険制度の十分な見直しがないまま、国民へ事前説明もなく後期高齢者医療制度を実施するなどは、国民を馬鹿にしているとしか言えない。
こんな行政をフランスでやったら暴動が必ず起きるであろう。
主体は人間であって、物ではないはずが、今は本末転倒の社会だ。 中野さんは言う、
今や疑いなく人類史上最大の浪費社会である米国においてさえ、倹約と質素とはこの国の国民性の隠されたる試金石なのである。 たとえばほかならぬあのベンジャミン・フランクリンもこう言っている、「金銭は過去において決して人を幸福にしなかったし、未来においてもしないだろう。 なぜならその本性の中に幸福を生む要素は何もないからだ。 人は金を持てば持つほどさらに欲しくなるばかりである。」。 節約よりも消費が生き方として承認されたのは、実に今世紀になってなのである。
富を追いかけることを是とする、ご利益宗教団体とその政党メンバーに聞かせたい言葉である。
本書の中のサブタイトルを一部残してみた。
司馬遼太郎はなぜ日本の将来を深く憂えたのか
経済的繁栄と引き換えに失った恥の意識
神をも恐れず思い上がる役人や技術者
無所有の極、良寛の心境を思い見ることの大切さ
人生の勝者となるのは、必ずしも先頭を行く者でない
自分を信ずる者が増えないかぎり、日本は世界から侮られる
恥知らずな政治家や官僚は、日本の美徳を汚している
日本人は現在の姿を先祖に対して恥じねばならない
一時、「国家の品格」とか「美しい国へ」という全く内容の無い本がベストセラーになったそうだが、本屋の店先で立ち読みだけで読めてしまい、論理の展開もなくイメージだけで取り込もうという意図がありありと感じられた。 むしろ、中野さんの本書を読むべきである。
中野さんがたびたび上げていた、新渡戸稲造の「武士道」、海音寺潮五郎などなどはぜひ読みたいと思う。
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