一茶記念館の今年度二回目の講座を昨日24日に聞いた。
演題は、「
一茶の『方言雑集』とふるさと北信濃のことば」で、信州大学名誉教授・馬瀬良雄さんが話された。
小林一茶は『
方言雑集』という語彙集をまとめたが、それには生地である柏原の方言を中心に、江戸言葉や全国を回る中で書きとめた方言や俗語が、さらには当時既にあった『
物類称呼』という全国方言事典からの孫引き言葉などが掲載されているとのこと。
「信濃の方言の文法に関わる記載」、「信濃の方言の語彙に関わる記載」、「北信濃のことば」という分類で、具体的な表現例をもとに説明され、大変興味深いものであった。 特に、後半で増田さんという方が、「
三水・赤塩の談話集」として、「3月下旬にあるお婆さんが年上のお婆さんを訪ねる」という想定で語られた会話が何とも心地良いものであった。 宮沢賢治の作品を地元言葉で語るという会があったり、岩手県遠野市の「昔話語り部」というのがあるが、あのようなものに近い雰囲気で郷愁を感じさせるものであった。
初めに話された、次代に残したい信州の言葉の第一は「
ズク」だそうで、ズクはやや否定的な意味で使われるが、逆にズクのある人をZUKU-MANだと講師の学生時代に言っておられたとも披露されていた。
最後に、秋山郷で収録した話し言葉を聞かせていただいたが、残念ながら全く理解できなかった。 しかし、その話し方は、万葉や平安時代から永々と続いてきたものだとか、その歴史の深さに驚いた。
講座を終えた所で、参加者の中に大井の川村さんという方がおられ、川村さんは「
一茶の信濃方言と江戸語」と題された方言集を自費で発行され、その一部を配布しても良いということで、頂いてきた。 一茶句を勉強するには座右の書になるのではと大事にして行きたい。 また、本書の巻末には、「一茶の方言と現在の旧富士里村中村の方言を対比する」という研究もあり、大変興味深い内容となっている。