一昨日届いた町の広報誌「しなの」を見たら、長野精神保健福祉協議会主催の講演会があると記されており、家内が以前著作を読んだことのある著者だとのことで、昨日、家内に半分引っ張られながら会場のホクト文化センター(県民文化会館)へ出かけました。
今月は「自殺対策強化月間」だそうで、毎年全国で3万人超の自殺者がいると、長野県でも500人にのぼるらしく、現状と対策の説明があり、まずは悩んでいる人に「声をかける」ことから始まるとのことでした。 その主旨を念頭に東京工業大学の上田紀行(のりゆき)先生による「生き心地の良い社会へ」というタイトルで、たぶん90分ほどの講演を聴きました。
上田紀行さんは、東京工業大学内の学生による人気投票で一番で、また著作の中から大学入試に使われる著者としてこちらも一番だそうです。 講演の最初から友達に話しかけるような親しい口ぶりで、大学教授という障壁を感じさせない人柄だとお見受けしました。 講演の内容を記すのは大変なので、書き留めた内容を箇条書きしておきます。
・「生き心地の良い社会」ということは、「暮らしやすい社会」のこと
・「癒し」という造語を先生がしたが、現在は先生が意図したとは別の世界で「癒し」という言葉が使われている由
・人生にとって喜怒哀楽が大切。 怒りや哀しみが生きる力を醸成させてくれる。
・「癒し」は「元気」
・2006年にクラスの学生200人に、「使い捨て」意識のある人は?と聞くと半数の学生が手を上げ唖然とされたとのこと
・日本はこれまで敗戦を3回味わっている。 1回目が太平洋戦争、2回目が1990年頃のバブル崩壊、3回目が小泉・竹中政権が行った「使い捨て」政策。
・欧米ではマネーゲームが行われているが、根底には家族や宗教があり人間関係が崩れない。 それに反し日本では、生きる下地がないまま、ただ金儲けができる人間が尊ばれ、出来ない者は負け犬として捨てても良いとされて来た。
・安心や信頼を失った社会になった
・弱者に対し「自己責任」という言葉で切り捨ててしまうが、経営者など強者の失敗は問われない。
・ルース・ベネディクト 「恥の文化」と「罪の文化」
・今の日本は、人の眼が気になる社会で、これに評価システムが持ち込まれ、家族など精神的支援の存在を皆無にしてしまった。 太平洋戦争が負けることは政府中枢には分かっていたが、「戦おう」という空気には誰もが逆らえなかった。
・日本社会は人の眼、他者の評価を気にする
・家出をした女学生の話を例とし、死のうと夜中に出歩き、たまたま教会に来てドアーを押したら開いて礼拝堂に入れたとのこと。 そこで朝までじっと座り考えていたが、考えているうちにもう一度やり直してみようという気持ちになり家に帰ったとのこと。 誰が解決の糸口を与えたわけではなく、ここにいたらひょっとして誰かが声をかけて、自分の思いを聞いてくれるかもしれない、という思いが自殺を留めたとのことであった。
・今後の日本は過去と同様の経済成長を望むことはありえず、「支え」や「救い」の意識を互いに持つことが大事
・苦しんでいる人に声をかけること、そして声をかけているその姿を見せることが重要で、支えられているというイメージや安心感が感じられる社会を築く必要がある
・昨年の東北大地震に対し、いまだ「天災」と「人災」が分けられていないことが問題だ。
・愛と思いやりが人間を支える、良き種を蒔く人になろう。
幼少時の父親や母親のこと、身内のこと、思春期の思い悩みなど、ご自分の体験を含め話され、ご自分の幼子(まだ1~2歳の双子らしい)が20歳になった時、自分は老齢になるわけで、その時に良い社会になっていることを目指して日々活動をされておられるという、大変エンカレッジされるお話でした。
講演後、著作販売があり、講師の思いをもっと詳しく理解しようと買い求めました。
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