信濃町から車で30分ほどでしょうか、菅平高原の一方の登り口である須坂市に住んでいた主婦が原発の危険性に気づき、脱原発運動を1976年頃から行って来たと、その過程を記した
「脱原発の道しるべ ? 聞いてください」
という書籍に出会いました。
著者のお嬢さんの家族が地中海の島に移住し、赤ちゃんを出産しましたが重度の障害を持ち生き抜く力もなく早々に絶えたとのことです。 そして、その島の対岸にはフランスの使用済み核燃料の再処理工場があり、周辺の海域から取れる海産物からは放射線が検出され、汚染された牛乳を海に廃棄している島もあると知り、原発の恐ろしさを肌に感じ、反原発運動に関わりだしたとのことです。
1998年に他界するまで精力的に反原発運動を展開され、毎月「聞いてください」というチラシを作って配布していたそうで、そのチラシをまとめたのが本書のようで、1999年に出版していたものを今回の震災と福島原発事故に遭って、お嬢さん方が内容の追記や注釈などを加え、今回再販したそうです。 著者の坂田静子さんは「須坂のレイチェル・カーソン」とも呼ばれた由。
一介の主婦がこれほどまでに熱情溢れる運動を展開されてきたことに本当に頭が下がる思いがしました。 30年前の彼女の思いや、原発に対する危険性を認める人たちがもっと居れば、今度の福島原発事故は起きなかったこでしょう。 また、これまでの政権や大臣たちが国力というものが経済や軍事だけでなく、国民の生活安全であることを中心に置いていればかかるような事故は起きなかったわけです。
先日行われた山口県上関町の町長選挙に見られるように、原発設置地や予定地の多くの地元民は過疎からの脱却、助成金や補助金交付が地場高揚につながると期待して原発誘致を促進したいと判断しています。 (福島原発の地元もそうでした) でも、福島原発があれほどまでに大きな災害を起こし、地元民のみならず周辺住民の生活を脅かしていることに、脅威を感じないのでしょうか? 補助金で今生きている人たちの生活が豊かになったとしても、享受できる人たちの人生はたかだか50年やそこらでしょう。 その間にも原発施設からはたとえ微量であっても放射性物質が出し続き、それが魚介類や野菜、果物、草など自然界のもろもろに蓄積されるわけです。 長い間に濃縮された放射性物質を含む食材をお腹に入れれば、当然相応の問題が発生することは明らかだと素人でも判断できますし、東海村や福島のような原発事故が今後は無いと誰も言えません。
本書の冒頭に、「ムラサキツユクサの警告」という項があり、静岡県の浜岡原発の周囲に植えられたムラサキツユクサの雄しべが青からピンクへと変色し、その傾向は風下に顕著だとのことで、放射能飛来による突然変異とされています。
そう言えば、昨年ピースウォークで浜岡原発を通りかかった時、地元で反原発運動をされている方から、周辺のある地域では地元の海藻をよく食べる習慣があり、その地域でのガンなどの発症率が他地域より多くなっているという話をうかがいました。 一時であれば問題のない線量であっても、それが蓄積されれば危険量を越えることにもなります。 原発は原爆(核兵器)と同様に危険な存在で、人類は核を完全管理する能力を持たずに見切り発車しているのです。
かつてアメリカでは大規模停電を起こさせ、原発の必要性を国民に意識付けるような策略があったそうですが(東京電力による計画停電も似たようなものでしょう)、日本でも所謂「やらせ」が横行していたようで、現在、枝野経産相はその火消しにやっきになっています。
官房長官の時に、「ただちに影響のあるレベルではない」としばしば発言していた枝野だが、植草さんによれば、あれは弁護士言葉でどうにでも言い繕える言葉だとのこと。 だから国民は政治家や大臣の言葉を信用できず、結果、「風評被害」という言葉がひとり歩きしているわけだが、それは政治家や官僚の誠意の無さ、虚しい発言が招いている所作であることに当の本人達が気づいていない所に、日本の不幸があると思います。
本書によると、既に日本では軽い放射性廃棄物をドラム缶に入れて海洋投棄をしているらしいです。 ドラム缶が破損して海洋が汚染されることは容易に想定できるわけで、これを見ただけでも「原子力がクリーンエネルギー」というのは実にマヤカシそのものなのです。 また、「被ばく」と聞くと我々は広島長崎の被ばく者を思い出しますが、
「被爆」と「被曝」
があることをもう一度思い起こしたいです。
先日の脱原発集会で落合恵子さんがビートルズの「imagine」を例に話されていましたが、本書でも「想像力を働かせてください」と訴えています。
ところで、先月、文科省が放射性物質による汚染マップを公開していましたが、南は千葉、埼玉、群馬までで、人口が多い東京や神奈川、また新潟、長野、山梨といった地域がどのような状況になっているのか分かりません。(小出しで誤魔化すのが官僚の手口だと穿ってしまいます) 群馬県の線量状況を見ると、その延長線上で長野県内に放射性物質が飛来しているものと当然考えられます。 長野県庁のホームページにも線量測定結果は掲載されていますが、7月時点のもので、3月の事故発生以降を時系列で捉えたものは公開されていないようです。 もっときめ細かい対応が必要です。 今日見たニュースの中に、神奈川県横浜市の学校で0.63?0.96マイクロシーベルトの放射線量を検出したとありました。 東日本はどこも安全だという地域はないのです。
◯セシウム飛散、250キロ以遠にも 群馬の汚染地図好評(asahi.com)
2 件のコメント:
はんぐろ様
いつも読ませていただいています。
明快な内容にいつも「そうだよなあ」と共感を致しています。
今般、黒姫の方も心配なので線量計を購入しました。
取り越し苦労であればいいのですが、次回黒姫に行った際に敷地内を測ってみたいと思っています。
草刈もし、落ち葉も集めていますので、少々心配をしています。
本当に取り越し苦労であればいいのですが・・・
いつも人様からいただいた情報に拙い文章で晒すのは恥ずかしい限りなのですが、思考のひとつの手立てになってくれればと思っている次第です。
私も線量計を買おうと思いつつ月日が経ち、飛び交う灰の種類が異なり正確な計測も難しいということで、二の足を踏んだまま今日に至っております。
まあ我々は人生の3分の2は過ぎていますので取り立てて問題にすることはありませんが、小さな子供達が心配です。 公園や野原で思いっきり遊べないなんて実にかわいそうですし、健康な心と体を持った大人に生育してくれるか実に気がかりです。
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