長編小説・太白(たいはく)山脈(TAEBAEK SANMAEK)を読もうとしたのですが、一冊目からして挫折してしまいました。
昨年、韓国巡礼(Walk9)した時の折り返し点(ビザの関係)で、対馬に一泊したのですが、その際に1948年頃朝鮮半島からたくさんの死体が対馬に流れ着いたと聞きました。 日本の敗戦後、半島は無秩序な状況にあり、また米ソの覇権や思惑も絡んで、朝鮮人民同士の争いが絶えなかったらしい。 社会主義を標傍する若者が増える中で、アメリカ軍に協働する右翼集団やヤクザなどが、粛清と称して仲間をたくさん殺し、針金で手首を縛ったまま海へ投げ込むなど、残虐行為を繰り返していたようです。 特に済州島では陰惨を極めていたらしいが(そのため日本へ逃亡し大阪近辺に住んだ人たちも多く、済州島を歩いた時に、親類縁者が大阪に住んでいるとよく聞いた)、その時の死骸が対馬にたくさん流れ着いたとのことであった。
当時の対馬では、どういう状況で死体が流れ着いたのか分からず、行政(役場)は何も対応を取らず、心ある住民や寺院が、火葬して弔ったらしい。 死んだ女性と幼児が乗った小舟が漂流し、その傍らに朴南と記された一升枡があったと、今でも保管されていると見せていただいた。 対馬の太平寺には、そうやって亡くなった朝鮮人の慰霊塔があり、先代の住職が懇ろに葬ったと聞いた。
そして、全羅南道にある智異山(チリサン)の山間では、パルチザンが隠れたり、仲間同士のトラブルもあったのでしょう、ここでもしばしば殺戮が行われていたようです。 今の時代であっても、当時の状況を話すことは敵対関係を明らかにすることとなりタブー視されているらしく、韓国の歴史の中で、日本統治時代だけでなく、朝鮮戦争が始まる前の混乱期を歴史の事実として明らかにするのは難しいらしい。 そんな経緯で、あの時代の韓国を知ることも大事なことではないかと思ったのでした。 あの時代の状況を知る一番の手がかりは、「太白山脈」という小説だと韓国で紹介され、翻訳物がないかと、何とか読むことができないかと思っていたら、何と近くの図書館にあったのでした。
所が、初めての韓国文学の翻訳物は登場人物の背景を理解するのが難しく、しかも登場人物の名前が難しいのでした。 日本文学で「鈴木一郎」と出てくれば、そのまま漢字のとおり読め、男性だと認識できるのですが、韓国の「鄭河變」と出てきて漢字であっても読み方がまず分からない。 最初に登場する段落では、「チョンハソブ」とフリガナがふってあるのですが、二度目はフリガナがなく、登場人物が色々入れ替わると、前に読んだ人物像のつながりが理解できなくなるのでした。 韓国は夫婦であっても別姓なので一層混乱します。 本小説は10分冊となっています。 読み進めれば、相応の理解は出来るのでしょうが、あの時代の総体的な流れが理解できるのか分からず、未消化のまま読書時間を占有されるのもちょっと苦痛に思え、結局読破を諦めることにしました。 公立図書館の所蔵本は逃げることもないので、また読みたい気分になったら借りてこようと思ってます。
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