作家・三浦綾子さんの著作というと、まず「氷点」「続氷点」が一番に思い出されますが、「塩狩峠」「海嶺」「天北原野」「細川ガラシヤ夫人」「母」「果て遠き丘」など数々の人間模様を描いた名作がたくさんあります。 最近読んだ著作では「泥流地帯」と「続泥流地帯」が実に心に訴えるものが有りました。 大正15年の十勝岳爆発による土石流被害を題材にした前編では、開拓農民の生活と被害の様子を伝え、後編では、土石流被害から立ち直ろうとする兄弟の姿を克明に描写し、最後は楼閣に売られた娘を助けた様子を、列車の窓からハンカチを振ることで人間の希望を表し作品は終わっています。
拓一と耕作兄弟の実に誠実というか人間愛に溢れたというか、人間本来の生態を如実に表しているように思え、誰もが人生の範とすべき人格ではないかと思いました。 それにしても土石流被害の様子は、3.11の津波被害に遭われた被災者のどうにもやりきれない思いに通じているように感じました。 苦しみの渦中にいる人々のことを、我々のように遠くにいる者はもっともっと心に留めなければいけないでしょう。
三浦綾子さんの作品を展示紹介している旭川の三浦綾子記念文学館では、来月、この泥流地帯をテーマに作品の要所を訪ねる旅を企画しています。
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