生命科学者・柳澤桂子さんの、平成16年出版の著作。
本書は、土壌、大気、食糧危機、化学物質、エネルギーと分類され、生命の誕生から原子力発電まで記述されているものだが、後段の原発の項から、ここだと思った一部の段落を転載しました。 帯には、「美しい地球を失いたくない 『生きて死ぬ智慧』の著者による環境問題入門書の決定版!」とあります。
2003年1月27日、名古屋高等裁判所金沢支部は、住民32人が国を相手に原子炉設置許可処分の無効確認を求めた行政訴訟の控訴審で、請求を棄却した一審・福井地裁判決を取り消し、許可処分を無効とする判決を言い渡しました。
これは、今後の日本の原子力発電と核燃料サイクル政策を左右する判決です。 70年代から、四国電力伊方原発の差し止め訴訟など、地元住民から原子力発電を止めてほしいという住民訴訟や行政訴訟がたくさん起こされてきましたが、すべて住民の敗訴に終わっていました。
なぜなら、国のエネルギー政策の中で、原子力発電は絶対に必要で、国の安全審査の手続きや技術基準にはいっさい誤りがないという前提に裁判所が立ってきたからです。 しかし、今回の判決は、「もんじゅ」のナトリウム漏れや事故やこれから述べる茨城県東海村の臨界事故、さらに東京電力の損傷隠しや偽報告など、事故が次々に起こり、国民の目が、国の原子力政策の不十分さを監視するようになったと、裁判所が判断したためでしょう。 さらに高速増殖炉の必要性が欧米で疑問視されているのも一つの原因だと思われます。
その後日本では、原子炉のシュラウド(炉心隔壁)に亀裂が見つかりました。 それも一つや二つではありません。 ほかにも、管理のずさんさ、作業のずさんさが次々にあきらかにされました。
原子力発電所は、つくるのに費用がかかります。 また、老朽化した発電所を解体するにも莫大な費用がかかります。 炭酸ガスの問題はありますが、火力発電所の方がずっと経済的なのです。
もう一つ大切なことがあります。 原子力発電では、放射性の廃棄物が出ますが、私たちは現在、それの安全な処理方法を知りません。 放射能は私たちのDNAを破壊しますから、もっとも恐ろしいものなのに、放射性廃棄物をどう処理すればよいのか、わからないのです。 処理方法を発見できるまで、運転を中止すべきだと私は思います。
原子力発電の大きな欠点は、発電量の調節ができないということです。 ですから、電気の需要の一番高い日の電力を一年中つくり続けなければなりません。 そのために電気があまります。 電力会社はそれを売ろうとし、いろいろな算段をします。 電気器具を大型化し、自動販売機がいたるところに置かれ、さかんにライトアップされています。
いまだ解決されていない危険をかかえているのに、なぜ大量の電気をつくる必要があるのでしょうか。
もし、原子力エネルギーにすべて頼る社会を作ってしまったら、電力会社の故障のために社会の機能がすべて止まってしまうことも考えられるのです。
安全に住める地球を子孫に残すことは私たちの義務です。 目先の利益、快適さを追求することはやめなければなりません。 政治を変えることも必要です。 そのための活動も必要です。 この本を読んだ人が、自分の得意の分野で行動を起こして下さることを心から願っています。
柳沢さんは7年も前に本書で原子力発電の危険性を訴え、他にも多くの科学者や心ある人々が警鐘を鳴らし続け、また反原発運動を展開してきたが、経済人や政治家、司法はこれを全く無視続けて来ました。 その挙句の事故が、今回の福島原発であったわけです。 これまで東電には事故隠しがたびたびあり、その点からも東電の責任は大変重い。 そして、政治家や財界人、司法に柳沢さんのような思想家がいないことが、この国の民にとって最大の不幸だと言えるでしょう。
福島原発の周囲20キロは今後死んだ場所となって人が住めず、また被曝したであろう住民が白血病など関連の病に苦しむことになるであろうと容易に想像できます。 「原発は安全、原発のコストは安い」などという、これまで教えられてきた欺瞞は捨て、本当に危険なものとして、原発は停止から廃止へと向かわさせるべきです。 「高い経済成長を維持するためには、危険であっても欠かせない」という思考も捨てるべきです。 一度あることは二度、二度あることは三度あるからです。 でなければ、我々の孫子が住めない日本列島になってしまうでしょう。 日本沈没。
◯「政府発表を鵜呑みにせず自分の身は自分で守れ」放射能汚染への正しい危機感
◯プルトニウムは呑んでも平気? 旧動燃キャラ「プルト君」の妄言 <-どこかの大学の先生も似たような発言をしていました。 平気でウソをつく学者、政治家、経済人、マスコミ、官僚などなど。 情報を持たずテレビ画面を見ているだけの国民は簡単に騙される。
◯地方代表に辞任の動き=首相責任論拡大もー民主 <-明日は地方選後半戦の投票日。 被災者救済や原発事故の早期収束ができない管首相の辞任を加速させるためにも、民主党の敗退を望む。 棄権ではなく反対勢力へ。
◯中国の原発でも隠蔽体質の当局が放射能漏れ事故隠していた <-どこの政府も都合の悪いものは隠す。 だから危険な原子力は平和利用であってもやめるべき。
◯福島第1原発事故は二重の人災だった日本共産党・吉井英勝衆院議員に聞く
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